卓上CNCを調べていると、どの機種にも「4軸モジュール」や「5軸に拡張」と書いてあります。足せば作れる物は増えそうですが、数万円する追加です。本当に自分に要るのかは、作りたい物の形で決まります。

自分はToolDance X1を予約していて、5軸にはかなり期待しています。ただ、検索候補にも「家庭用cnc 4軸」「5軸」が並んでいて、同じところで迷っている人は多そうです。そこで、作りたい物から逆に考えてみました。

紹介している機械とオプションはどれも未所有・未使用です。2026年10月4日に確認した公式ページと、これまでの記事の調査に基づく考察で、数値は公表値です。

先に結論:作りたい物で選ぶ

形ごとに分けると、こうなります。理由は下の章で見ていきます。

作りたい物向いている軸例
平らな物3軸キーボードのプレート、看板、基板、浅い彫刻
丸い物・筒4軸ペン、取っ手、チェスのポーンやルーク
斜めの面に穴や平面がある物5軸
3+2
傾いた面にまっすぐ開ける穴
向きの違う曲面が続く物5軸
同時
チェスのナイト、小さな像

家庭用CNCの選び方でも書いたとおり、表と裏を持ち替える設計にすれば、3軸でも作れる物はかなりあります。4軸・5軸は「作れない物を作れるようにする」だけでなく、「持ち替えと位置合わせの手間を減らす」装備でもあります。

4軸と5軸で、何が変わる?

結論の表を見ると、違いは「材料をどう向けられるか」です。

4軸は一つの軸で回し、5軸は回したうえで傾ける左は4軸の概念図で、材料を横向きの一本の軸の周りに回し、上から下りる刃を側面へ向ける。右は5軸の概念図で、材料を載せた台を回し、さらに台ごと傾けて、斜めの面へ刃を向ける。一般的な概念図で、特定の機械の機構ではない。 4軸は「回す」、5軸は「回して、傾ける」 刃は上から下りたまま、材料の向きを変える 4軸 5軸 一本の軸の周りに回す 回転軸 台を回す 台ごと傾ける 順番に回せば、側面へ刃を向けられる 傾いた面や斜めの穴にも向けやすい 一般的な概念図 / 特定の機械の機構、可動範囲、精度を示すものではありません
4軸(青)と5軸(オレンジ)で、材料の向きの変え方がどう違うかを示す一般的な概念図。特定の機械の機構や可動範囲を描いたものではありません。
  • 3軸 刃が前後・左右・上下に動くだけ。上から見える面しか削れません。
  • 4軸 材料を一本の軸の周りに回せます。丸い物の側面に、ぐるっと刃を届かせられます。
  • 5軸 回したうえで、さらに傾けられます。斜めの面や、向きがばらばらな面にも刃が届きます。

5軸には、向きを決めて止めてから削る「3+2加工」と、向きを変えながら削る「同時5軸」があります。傾いた面にまっすぐ穴を開けるなら前者、ナイトの馬の頭のように削りながら刃の向きを変えたい形なら後者です。4軸にも、回して止めてから削る使い方と、回しながら削る「同時4軸」があります。Autodesk・5軸加工

軸が増えたから精度が上がる、というわけではない点は気をつけたいところです。詳しい違いはX1の記事にまとめています。

卓上CNCの4軸・5軸オプション

これまで調べてきた機種のオプションを並べました。価格は10月4日の公式ストアの表示です。

機種(追加できる軸)回せる・載せられる大きさ価格
Z1
4軸
直径80×長さ150mm。回す力は約2.5Nm299ドル
Carvera Air
4軸
直径92×長さ200mm。約10Nm(ハーモニックドライブ)499ドル(本体とのセットなら+399)
Carvera
同時4軸
直径92×長さ240mm(ハーモニックドライブ)599ドル
ED1
4軸
公式ページで確認できず499ドル(予約販売、通常769)
C500
4軸
直径95mmまで。長さ方向の加工範囲は175mmVIPで4軸付きは本体より400ドル高(9月8日確認)
X1
5軸・開発中
同時5軸で80×80×80mm、3+2で80×114×92mm未発表

出典:Makera Z1 4軸モジュール・Z1のFAQ、Carvera Air 4軸モジュール、Carvera 4軸モジュール、TwoTrees ED1用4軸、NestWorks C500、ToolDance X1の仕様。C500の価格はED1の記事で確認した値です。

加工中に回しながら削る「同時4軸」を公式ページにはっきり書いていたのは、Carveraだけでした。ほかの機種で同時に動かしたいなら、買う前に確かめたいところです。

4軸で選ぶなら、目立つのは回す力の差です。Z1の約2.5Nmは、Carvera Airのハーモニックドライブ版の約10Nmのおよそ4分の1。金属の丸い物を削るなら、力に余裕のあるほうが安心です。

足す前に確かめたいこと

オプション表を見ると、どれも足せそうに見えます。ただ、足したあとに困りやすいところもあります。

  • 削れる大きさが小さくなる:X1は3軸なら400×265×180mmの範囲で動けますが、同時5軸で載せられる部品は80×80×80mmまでです。4軸でも、回せる直径と長さの範囲に収まる物しか削れません。
  • 加工の指示を作るソフト:4軸・5軸の動きを含んだ加工の指示(ツールパス)を作れるソフトが要ります。X1の仕様では、部品の加工指示の自動作成は3軸までで、レリーフや立体の彫刻なら同時5軸まで作れると書かれています。部品を5軸で削るなら、Fusion 360などの他社のCAMを使うことになりそうです。X1の仕様
  • 材料を押さえる道具:回したり傾けたりしても外れないように、固定のしかたも変わります。固定具が刃や機械に当たらないかも確かめます。
  • 機種ごとに専用:4軸モジュールは機種ごとに別で、乗り換えても使い回せません。

自分ならどうするか

自分が最初に作りたいチタンのキーキャップは、上から削る3軸と持ち替えで作れそうです。チェスセットまで考えると、ポーンやルークは4軸、ナイトは5軸が向いています。

なので、自分にとって4軸・5軸は「最初から必須」ではなく、「作りたい形が増えたら効いてくる」装備です。X1の5軸は、製品版の大きさ、価格、ソフトの対応が出てから決めるつもりです。

読者の方へのおすすめをまとめると、こうなります。

  • 平らな物が中心なら、まず3軸で始めて、浮いた予算を刃や測定具に回す
  • 丸い物を作りたいなら、4軸の回せる大きさと回す力で選ぶ
  • 斜めの面や複雑な形を作りたいなら、5軸の載せられる大きさとソフトの対応まで見て選ぶ

更新履歴

  • 2026-10-04:初版。各社の4軸・5軸オプションの公式ページと価格を確認。
  • 2026-10-05:X1の加工指示の自動作成について訂正。部品は3軸までですが、レリーフや立体の彫刻は同時5軸まで作れると仕様に書かれていました。