前に、自作キーボードのケースを檜で作ったことがあります。結果、木工が下手すぎました。作りたい形ははっきりあるのに、自分の手が追いつかないんですよね(キーキャップの記事に書きました)。

3Dプリンタも持っています。でも、金属で欲しかった物を樹脂で作っても、そこで完成とは思えない。作りたいのは、チタンのキーキャップ、チタンのApple Watchのバンド、チェスの駒、スターリングエンジン。やっぱり金属がいい。それも、できればチタンがいい!

そうやって卓上CNCを探していて、自宅用の候補に入れたのがTwoTreesのED1です。工具を5本まで自動で替えてくれて、カバーも付いていて、対応材料にはチタンどころか宝石まで書いてあります。

ED1はまだ持っていません。公式ページと、TwoTreesにメールで聞いた内容、比較機種の公式情報を読んで、高専で旋盤やフライス盤を使った経験から考えたことを書いています。卓上CNCの選び方そのものは家庭用CNCの選び方にまとめました。

先に結論:チタン目的なら、出荷後のデータを待ちたい

ATC付きの卓上CNCを探しているなら、ED1は外せない候補です。ただ、自分がいちばん削りたいチタンについては、メーカー自身が「長時間の加工は勧めない」と書いていて、冷やす仕組みも見当たりません。なので自分は、チタンを削った条件を公開しているX1にしました(下の章)。ED1は、12月に出荷が始まって、実際に削った人の結果が出てきたら追記します。

公式の仕様

惹かれたのは、面倒な段取りを機械がやってくれるところ

高専で旋盤やフライス盤を使っていたころ、削っているところや、最後の仕上げで表面がきれいになっていくところは好きでした。嫌だったのは、その前後です。

工具を替えて、高さを合わせ直して、切りくずと切削油を掃除する。汚れるし、危ないし、面倒。これを毎回全部手でやりたいかというと、正直そうでもないです(C500の記事にも書きました)。

ED1は、そこをかなり機械に任せられそうです。工具は5本まで自動で交換してくれて、手で替えると2〜5分かかるところが約10秒。キーキャップなら、荒く削る刃、穴をあける刃、仕上げの細い刃と、何本も持ち替えたくなります。それが勝手に入れ替わるなら、1個作って形を調整して、気に入ったら1台分そろえる、という作り方がぐっと現実的になります。

気になるのは、替えたあとに同じ高さで削れるかです。工具をつかむ部分の規格、交換したあとの長さのずれ、交換に失敗したときにどう止まるか。ここはまだ公式に数字が出ていないので、出荷後のレビューでいちばん見たいところです。

じゃあ、チタンは削れるのか

いちばん知りたかったのはここです。公式の材料一覧には、たしかにチタンが入っています。ただ、すぐ横に「軟鋼とチタンは、長時間の加工は推奨しない」と書いてあります。

自分が作りたいのはキーキャップや時計の小さな部品なので、そもそも何時間も削る物ではありません。薄い板から形を抜いたり、浅く彫ったりするくらいなら、守備範囲に入りそうです。逆に、厚い塊からケースを丸ごと削り出すような使い方は、この書き方を見る限り向いていないと思います。

もうひとつ引っかかったのが冷却です。チタンは削ると刃の先に熱がこもりやすいので、冷やしながら少しずつ削るのが基本です。でもED1の公式ページには、液で冷やす仕組みも、少量の油を霧にして吹きつけるMQLも、エアブローも見当たりませんでした。比べている機種だと、C500はMQL、X1は液体での冷却を公式に書いています。ED1でチタンをやるなら、外からエアを当てられるかは先に確かめておきたいです。

チタンを諦めて別の機械を買っても、結局またチタンを削りたくなると思うんですよね。なので、そこは外したくありません。

「Gemstone」って何が削れるの? と聞いてみた

材料一覧に「Gemstone(宝石)」とあったのも気になりました。どんな石を、どうやって削るのか。TwoTreesにメールで聞いてみたら、返ってきたのは翡翠を、水を使いながら削った試験の話でした。

工具はダイヤモンド系、回転数や送りの目安まで教えてもらえました。ただ、標準のED1は防水ではないので、機械に直接水をかけるのは勧めていない、とのこと。試験も社内の研究の段階で、正式な加工方法としてはまだ出していないそうです。くわしいやり取りは翡翠の記事にまとめました。

正式な方法ではないとはいえ、自分なら翡翠でアクセサリーを作ってみたいです。小さなオブジェクトを彫るのも楽しそう。チタンとは別の方向で、ED1の気になるところです。

±0.01 mmは、そのまま信じていいのか

公式の精度は±0.01 mm。数字だけ見るとかなり良いです。ただ、これが「狙った位置に動く精度」なのか「同じ位置に戻ってくる精度」なのか、どう測ったのかは書かれていません。削った部品の寸法は、主軸の振れや削るときのたわみ、材料の固定でも変わるので、この数字をそのまま仕上がりの精度とは読まないようにしています。

オートレベリングも便利そうですが、補正してくれるのは材料の表面の高さです。機械そのもののガタや振れまで消してくれるわけではありません。

C500・HiMill D1Sと比べると

迷うとしたら、もっと金属寄りのNestWorks C500か、もっと手軽なHiMill D1Sです。

項目ED1C500D1S
主軸600 W/18,000 rpm800 W/18,000 rpm250 W/13,000 rpm
工具交換5本ATC5本ATC手動のクイック交換
冷却記載なしMQL液体クーラントなし
重さ38 kg約120 kg17.8 kg
加工範囲300×200×120 mmATCなしで240×210 mm280×200×80 mm
価格予約価格2,699ドルからあとから申し込む枠で2,799ドルからセール価格1,039ドルから(9月時点)

出典:TwoTrees ED1・NestWorks C500(2026年10月5日確認)、HiMill D1S(2026年9月8日確認)。C500の価格は、10月8日に確認したKickstarterの、あとから申し込める価格(Late Pledge)です。

C500は主軸が800 Wで、MQLも閉ループのモーターも付いていて、金属を削るための装備はED1より一段上です。そのかわり約120 kgあって、38 kgのED1とは置き場所の考え方からして変わります。精度は、C500が位置決めと繰返しを分けて書いているので、ED1の±0.01 mmとは単純に比べられません。C500とX1、Carveraの比較は金属加工用卓上CNCの比較に書きました。

D1Sは価格がED1の半分以下で、アルミから気軽に始めるにはよさそうです。公式にはアルミを16時間削った例や、TC4チタンの加工例も載っています。ただ、工具は手で替えるタイプで、鋼やチタンの長時間加工はやはり勧めていません。段取りを減らしたい自分には、ATCのあるED1のほうが合っています。

買うなら、何がそろえばいいか

ATCとカバーが付いて、この大きさで予約価格2,699ドルから。家で小さな金属部品を作りたい人には、かなり魅力的な組み合わせだと思います。それでも自分が予約しなかったのは、チタンについての判断材料が足りなかったからです。

次のどれかが出てきたら、もう一度考えます。

  • 量産機でチタン(TC4/Grade 5)を削った動画と、そのときの条件
  • 工具交換のあとの長さのずれと、主軸の振れの実測
  • エアブローやMQLを後から付けられるか
  • 日本の100 Vで使えるか、保証と送料

木材や樹脂、アルミが中心で、工具交換を楽にしたい人なら、今の情報でも十分に候補になると思います。チタンが目的なら、出荷後のデータを待ってからでも遅くありません。

その後、自分はX1を支援しました

家に置ける大きさとATCのバランスで見ると、調べた中ではED1がいちばん気になる機械でした。そのあと、チタンとステンレスを実際に削った条件まで公開しているToolDance X1を見つけて、そちらを予約し、2026年10月15日にKickstarterで支援しました。理由はX1の記事に書きました。ED1も、出荷後のレビューやチタンを削った結果が出てきたら、この記事に追記します。

よくある質問

ED1でチタンは削れますか?

材料一覧には入っていますが、公式に「長時間の加工は推奨しない」とあります。小さな部品を短い時間で削るくらいが現実的だと思います。

冷却(クーラント)は付いていますか?

2026年10月5日時点の公式ページでは、液体のクーラントやMQLの記載は見つかりませんでした。集じん機のオプションはありますが、冷却とは別の物です。

宝石は削れますか?

TwoTreesによると、翡翠を水を使って削った社内試験があります。ただ、標準のED1は防水ではなく、正式な加工方法としてはまだ出ていません。くわしくは翡翠の記事にまとめています。

初心者でも使えますか?

カメラやプローブ、カバーが付いているので、始めやすい部類だと思います。ただ、材料ごとの回転数や送りは自分で決めることになるので、木や樹脂から始めて、アルミへ進むのが無難です。

購入リンクと開示

価格や出荷時期、送料は変わるので、注文前にTwoTrees公式商品ページで確認してください。ED1は持っておらず、メーカーからの提供も受けていません。今後アフィリエイトリンクを使うときは、そのリンクだと分かるように書きます。

参考資料

更新履歴

  • 2026-10-17:予約価格が2,399ドルから2,699ドルに上がったので更新しました。X1をKickstarterで支援したので、その章と冒頭を直しました。
  • 2026-10-08:C500の価格を、Kickstarterのあとから申し込める価格(2,799ドルから)に更新しました。
  • 2026-10-05:公式の仕様を「公式情報からの引用」の囲みにまとめ、文章を書き直しました。翡翠をメーカーに聞いた話も追加。公式ページの変更に合わせて、自動工具交換の時間(約7秒→約10秒)、価格(予約価格2,399ドルから)、出荷時期(12月から)、C500の重さ(約95 kg→約120 kg)と精度を更新。C500とD1Sの比較表を1つにまとめた。
  • 2026-09-08:初版。