最近アソビ大全でチェスを遊ぶようになって、自分のチェスセットを作りたくなりました。
個人的に、金属の質感が好きなんです。手に取る駒は金属にして、盤は木で作りたい。この記事では、そのセットを作るために何を調べて、どう作れそうかをまとめました。
紹介している機械はどれも未所有・未使用で、駒も盤もまだ作っていません。2026年10月4日に確認した公開資料と、これまでの記事の調査に基づく考察です。
作るには、何を決めればいいか
チェスセットは、駒と盤に分けて考えると整理しやすくなります。どちらも、作り方を選ぶ前に決めておきたいことがあります。
- 大きさ:機械で作れる範囲に入るか
- 形:削るか、積むか、型に流し込むか
- 材料:駒は何の金属にするか、盤はどの木にするか
金属の駒を作る方法は、大きく三つあります。卓上CNCで金属の塊から削る、金属3Dプリンタで粉末を溶かして積む、溶かした金属を型に流し込む(鋳造)です。それぞれ得意な大きさ・形・材料が違うので、まず駒と盤の大きさから調べました。
大きさ:駒と盤の標準サイズ
卓上CNCも金属3Dプリンタも、一度に作れる大きさに上限があります。たとえばSnowPodの造形範囲は80×80×100mm、ToolDance X1の3軸の移動範囲は400×265×180mmです。駒と盤がそこに入るかを判断するために、国際チェス連盟(FIDE)が大会用に決めている標準サイズを目安にしました。
| 駒 | 標準の高さ | 底の直径(高さの40〜50%) |
|---|---|---|
| キング | 95 mm | 38〜47.5 mm |
| クイーン | 85 mm | 34〜42.5 mm |
| ビショップ | 70 mm | 28〜35 mm |
| ナイト | 60 mm | 24〜30 mm |
| ルーク | 55 mm | 22〜27.5 mm |
| ポーン | 50 mm | 20〜25 mm |
出典:FIDE「Chess Equipment without Electronic Components」(2026年3月1日から有効)の6.3。高さの順番を守れば10%まで変えてよく、底の直径は高さの40〜50%とされています。底の直径の列は、この割合から計算した値です。
盤については、同じ規定の3.3でマスの一辺を5〜6cmとし、1マスにポーンが4個楽に入ることとしています。マスは8列なので、マス目の部分だけで40〜48cm四方になり、周りに枠を付ければさらに大きくなります。
駒は30度ほど傾けても倒れないこと、駒と盤の底にはフェルトなどの滑り止めを付けることも書かれています。なお、大会用の駒の材料は木かプラスチック、またはそれに近い素材とされているので、金属の駒は家で遊んだり飾ったりするためのものになります。
駒の形:丸い駒とナイトで、作り方が変わる
駒の大きさが分かったところで、作り方を左右するのは形です。チェスの駒は、形で大きく二つに分かれます。
丸い駒は、回転軸で削るのに向く
ポーン、ルーク、ビショップ、クイーン、キングの胴は、中心の軸のまわりに回した形をしています。こういう形は、材料を回転軸に付けて回しながら削るのに向いています。4軸と5軸の違いは家庭用CNCの選び方とX1の記事にまとめています。
ビショップの切れ込みやキングの十字のように、回転した形ではない部分もあります。そこは回転を止めて、向きを決めてから削ります。回転軸のない3軸だけで作るなら、表と裏を持ち替えて削ることになり、そのたびに固定と位置合わせのやり直しが入ります。
ナイトは、5軸・金属3Dプリンタ・鋳造が候補
ナイトの馬の頭は左右対称ではなく、いろいろな向きに面があります。上からだけでは刃が届かないので、5軸で向きを変えながら削るか、ほかの方法で作るのが向いています。
金属3Dプリンタは、削るのが難しい形も積み上げて作れます。ただし、積層の跡やサポートを取る手間は残ります。
鋳造も一つの方法です。駒の形をした原型を石こうのような材料で包み、原型を焼き飛ばしてできた空洞に、溶かした金属を流し込みます。原型を3Dプリンタで作れば、ナイトのような形も金属にできます。3Dプリンタのメーカーとして知られるFormlabsは、鋳造用のレジンで作った原型を使う手順を公開していて、原型を焼き飛ばすには732℃以上まで加熱すること、電気炉(バーンアウト炉)と遠心式や真空式の鋳造機、換気、防じんマスクが要ることを挙げています。試した金属は金・銀・青銅です。Formlabs・鋳造の手順
駒の材料:チタンか、ステンレスか
作り方によって、使える金属は変わります。材料ごとの溶ける温度と重さの目安は次のとおりです。
| 材料(純金属) | 融点 | 密度 |
|---|---|---|
| チタン | 1670℃ | 4.506 g/cm³ |
| 鉄 | 1538℃ | 7.87 g/cm³ |
| 銅 | 1084.62℃ | 8.96 g/cm³ |
| アルミニウム | 660.323℃ | 2.70 g/cm³ |
出典:英国王立化学会の周期表(チタン・鉄・銅・アルミニウム)。実際に使うのは合金なので、値は少し変わります。ステンレスは鉄が主成分なので、鉄の値に近くなります。
同じ形なら、チタンの駒は鉄(ステンレス)の約6割の重さ(4.506÷7.87≒0.57)、アルミなら約3分の1です。重いほうが盤の上で安定しますが、FIDEも「動かしやすく、置いたときに安定する重さ」としか決めていないので、ちょうどいい重さは試作して確かめたいところです。
方法ごとに見ると、こうなります。
- 削る(CNC):チタンもステンレスも候補。ToolDance X1はGrade 5チタンを60分以上削った条件を公開していて、TwoTrees ED1とC500もチタンの加工を案内しています。キングの十字やナイトの耳のような細い部分は、細い刃でどこまで削れるかによります。
- 積む(SnowPod):材料は316Lステンレスだけで、チタンは使えません。
- 流し込む(鋳造):アルミや、Formlabsが試している青銅・銀などが候補です。チタン(1670℃)やステンレス(鉄の1538℃に近い)は溶ける温度が高く、自宅の設備で流し込むのは難しいと考えています。
盤:木で作る
駒が金属でも、盤は木にしたいと考えています。FIDEの規定も、盤はバーチ、メープル、ヨーロッパのアッシュを、ウォールナット、チーク、ブナと組み合わせた天然木で作ると例を挙げています。そのほか、反りがなく平らなこと、明るいマスと暗いマスの差がはっきりしていること、表面がつや消しで光を反射しないこと、底に滑り止めを付けることも決められています。FIDE・盤(3章)
大きさで考えると、マス目の部分だけで40〜48cm四方になります。X1の3軸の移動範囲は400×265mm、TwoTrees ED1の加工領域は300×200mmなので、盤を一枚のまま削ることはできません。マスや帯を分けて作り、あとで貼り合わせる作り方になりそうです。
明るい木と暗い木の帯を交互に貼り合わせて輪切りにし、互い違いに並べれば市松模様になります。帯や細かい部分ならCNCの範囲に入るので、寸法をそろえるところは機械に任せられるかもしれません。キーボードの側面を檜で作ったときは木工にかなり苦戦したので、機械に任せられる部分が増えると作りやすくなりそうです。
作り方を当てはめる
ここまでの大きさ・形・材料を、調べてきた機械と鋳造に当てはめるとこうなります。
- SnowPod(積む)
- 大きさ:造形範囲80×80×100mm。全部の駒が入る(キングは高さの残りが5mm)
- 形と材料:ナイトのような形に向く。材料は316Lステンレスだけ
- ToolDance X1(3軸)
- 大きさ:移動範囲400×265×180mm。駒は余裕だが、盤を一枚では削れない
- 形と材料:上からしか削れないので持ち替えが要る。チタンも候補
- ToolDance X1(同時5軸)
- 大きさ:最大ワーク80×80×80mm(開発中)。キング95mm・クイーン85mmは入らない。10%小さくするとクイーン(76.5mm)は入るが、キング(85.5mm)は入らない
- 形と材料:丸い駒もナイトも、向きを変えながら削れる
- ToolDance X1(3+2加工)
- 大きさ:最大ワーク80×114×92mm(開発中)。どの寸法が高さ方向かは公表資料から確認できない
- 形と材料:向きを決めてから削る
- TwoTrees ED1
- 大きさ:加工領域300×200×120mm。4軸に付けられる材料の太さ・長さは確認できない
- 形と材料:4軸オプションで丸い駒を削れる。ナイトは面の向きが多い
- NestWorks C500
- 大きさ:4軸に付けられる材料の太さ・長さは確認できない
- 形と材料:同時4軸モジュールで丸い駒を削れる。ナイトは面の向きが多い
- 鋳造
- 大きさ:型を入れる容器と電気炉の大きさで決まる。設備を決めていないので未確認
- 形と材料:原型を作れればナイトも作れる。アルミ・青銅・銀などが候補
機械の大きさは各記事で引用した公式資料の値です。実際には材料を押さえる固定具が要るので、作れる大きさは公表値より小さくなります。
いちばんの引っかかりは、X1の同時5軸にキングが入らないことです。5軸で全部の駒を削るなら、キングとクイーンだけ小さめにするか、別の方法で作ることになります。
自分ならこう作りたい
今の本命はToolDance X1です。
ただ、標準サイズのキングとクイーンはX1の同時5軸の範囲に入りません。加工指示の自動作成は、仕様では部品が3軸まで、レリーフや立体の彫刻が同時5軸までです。ナイトのような立体を彫刻として作れるか、部品として他社のCAMで作るかは、これから確かめたいところです。
今の考えをまとめると、こうなります。
- 駒:チタンかステンレスで、丸い駒は回転軸で削る。ナイトは5軸で削るか、金属3Dプリンタや鋳造も比べる。キングは大きさを工夫する
- 盤:明るい木と暗い木で作る。帯を貼り合わせる方法が候補で、CNCで寸法をそろえられるかを確かめる
次に確かめたいこと
- X1・C500・ED1の回転軸に、どの太さ・長さの材料まで付けられるか
- X1の3+2加工の最大ワーク(80×114×92 mm)は、どの寸法が高さ方向か
- ナイトの形を、細い刃でどこまで削れるか
- 金属の駒の重さと、30度傾けても倒れないか
- 盤の木の組み合わせと、帯を貼り合わせる手順
- 鋳造を選ぶなら、電気炉や鋳造機の費用と置き場所
答えが分かったら、この記事に追記します。