「卓上CNC おすすめ」で検索すると、出てくるのは数万円の木工用CNCが中心でした。でも自分が欲しいのは、家でアルミやチタンを削れる機械です。作りたいのは、チタンのキーキャップやApple Watchのバンド、チェスの駒、スターリングエンジン。

この1か月、ED1、X1、C500、Carvera Air、Z1と1台ずつ調べてきたので、金属を削りたい人向けに、目的別にまとめました。

どの機械もまだ持っていません。ToolDance X1は、2026年10月15日にKickstarterで支援しました。数字は各社の公表値で、価格は2026年10月8〜17日に確認し、1ドル150円で計算しています。

先に結論:目的別のおすすめ

こんな人におすすめ本体の価格
まず安く始めたい。アルミが中心ならProMakera Z1/Z1 Pro1,399ドル(約21万円)/1,799ドル(約27万円)
アルミが中心で、少し大きい物や4軸もCarvera Air2,699ドル(約40.5万円)
工具交換を自動にしたい。置くのは机TwoTrees ED1予約2,699ドル(約40万円)
チタンやステンレスを削りたいToolDance X1VIP 2,799ドル(約42万円)から
個人で5軸に挑戦したいX1+5軸モジュール5軸付きのセットで4,449ドルから(約67万円)
重くていいから、金属用の装備がそろった1台NestWorks C5002,799ドル(約42万円)から

アルミや真鍮なら、どの機種でも削れます。迷うのは、チタンやステンレスを削りたいか、工具交換を自動にしたいか、どこに置くか、の3つです。

選ぶ順番

1. 削りたい金属は何か

アルミ・真鍮・銅は、5機種とも対応しています。差が出るのはチタンとステンレスです。Z1は「経験がなければ勧めない」、Carvera AirとED1は「長時間は勧めない」と書いていて、C500は対応材料に載せています。調べた範囲で、チタンとステンレスを削った条件まで数字で出していたのはX1だけでした。くわしくはアルミ・ステンレス・チタンは削れる?にまとめています。

2. 作りたい物の大きさ

機種加工範囲(mm)主軸工具交換冷却
Z1200×200×100150 W手エア
Carvera Air300×200×130200 W手外からエア
ED1300×200×120600 WATC 5本記載なし
C500240×210800 WATC 5本MQL
X1400×265×1801,500 WATC 9本エア、フラッド

各社の公式仕様から。Carvera Airはコンプレッサーをつないでエアを吹きます。MQLは少量の油を霧にして吹く方式。X1の主軸は日本の100 Vでは約900〜1,000 Wになります(メーカーの回答)。C500の加工範囲はATCなしの値で、ATCを付けると狭くなり、資料によって値が違います。

キーキャップのような小物ならどれでも収まります。200 mmを超える物を作りたいなら、Carvera Air、ED1、X1です。

3. 工具交換を自動にしたいか

刃を替えるたびに手で付け替えて、刃の長さを測り直すのは、意外と手間です。Z1とCarvera Airは手で替える方式で、ED1とC500は5本、X1は9本まで自動で替えます。

4. どこに置けて、電源は足りるか

卓上CNCの重さ公表値の重さを横棒で比べた図。Makera Z1 約17kg、Carvera Air 約30kg、TwoTrees ED1 38kg、Carvera 約50kg、NestWorks C500 約120kg、ToolDance X1 公称100kg。X1はオレンジ。 卓上CNCの重さ 公表値の本体重量(梱包は含まない) Makera Z1Carvera AirTwoTrees ED1CarveraNestWorks C500ToolDance X1 約17kg約30kg38kg約50kg約120kg100kg 各社の公式仕様(2026年10月5日確認)から作図 / 棒の長さは重さに比例
各社の公式仕様の本体重量。オレンジは自分が支援したX1。

家に置くなら、重さで候補がかなり変わります。机に載せやすいのは、40 kgくらいまでのZ1、Carvera Air、ED1。C500とX1は100 kgを超えるか前後なので、頑丈な台と、部屋まで運ぶ人手が要ります。

電源は、家のコンセントが2口合わせて1,500 Wまで。Z1は最大300 W、Carvera Airは400 W、ED1は840 Wで、余裕があります。X1は、メーカーの回答では日本の100 Vなら機械全体でも1,500 Wに収まり、電気工事は要りません(以前の回答にあった最大1,700 Wは、110/120 Vのときの値でした)。どれだけ余裕があるかは分からないので、コンセントは単独で使うのが安心です。くわしくは家庭用CNCを買う前に確認することに書きました。

5. 総額で比べる

本体の値段だけでは決まりません。Z1に集じん機、4軸、プローブ、バイスを足すと、1,399ドルの本体が2,295ドルになります。本体の1.6倍です。海外から個人で買うときの消費税は、価格の6割に10%。刃や材料を押さえる道具も要るので、欲しい装備を全部入れた額で比べるのがおすすめです。

迷いやすい「どっち?」

Z1かCarvera Airか

差は1,300ドル。いちばんの違いは、加工範囲(200×200 mmと300×200 mm)と、テーブルを動かすねじ(Z1は台形ねじ、Carvera Airはボールねじ)です。木や樹脂、基板が中心ならZ1、アルミや銅が中心で部品が200 mm以内ならZ1 Pro。200 mmを超える物や、4軸で金属を削りたいならCarvera Airです。くわしくはZ1とCarvera Airの違い。

ED1かX1か

ここは自分がいちばん迷ったところです。

ED1は38 kgで、電源も最大840 Wなので心配がありません。家の二階に置きたいし、これからの引越しも考えると、軽いのはやっぱり大きいです。

それでも最後はX1にしました。決め手は、加工範囲とチタンです。ED1はメーカー自身が「チタンの長時間の加工は勧めない」と書いていて、冷却の仕組みも見当たりません。X1はチタンを60分以上削った条件を公開していて、液体の冷却も選べます。

値段は、本体どうしなら、X1がVIPのキャッシュバック(200ドル)を引いて2,799ドル、ED1が2,699ドルで、差は100ドルです。差が開くのは、X1にフラッドや5軸を足したときです。

X1かC500か

どちらも100 kg前後で、ATC付き。C500は800 Wの主軸とMQL、5本のATC、囲いが最初からまとまっていて、4軸も追加できます。X1は主軸が1,500 Wで、液体の冷却と5軸を選べます。比べた記事はC500の比較とX1の記事です。

これって要る? ATC・4軸と5軸・フラッド

ATCは要る?

1つの部品に何本も刃を使うなら、あると楽です。高専で旋盤やフライスを使っていたとき、工具を替えて、また位置を合わせる作業は、毎回全部手でやりたいものではありませんでした。逆に、1〜2本の刃で済む簡単な部品が中心なら、手で替える機種でも十分です。

4軸・5軸は要る?

4軸は材料を回せて、5軸は回したうえで傾けられます。丸い物の側面に模様を彫るなら4軸、チェスのナイトのように、いろいろな向きに面がある形なら5軸の出番です。個人で5軸を使いたいなら、今はX1の5軸モジュール(同時5軸で載せられるのは80×80×80 mmまで、開発中の仕様)が候補です。卓上5軸のXmachine WM-100は、輸出の規制で法人向けだけでした(WM-100の記事)。最初の1台なら、作りたい形が増えてから足しても間に合います。くわしくは4軸・5軸は必要?。

フラッド(液体の冷却)は要る?

X1の公開値では、フラッドの条件のほうが、チタンを削れる量が約2倍です(回転数や送りも変えた条件)。ただ、エアだけでもチタンを60分以上削れた条件が出ています。液体は補充や掃除が増えて、二階なら漏れたときも心配です。小物が中心なら、まずエアで始めて、足りなければ足す、で十分だと思います。

安い木工用CNC(3018など)との違い

検索でよく出てくるのが、「3018」と名前の付いた小型CNCです。たとえばSainSmartの3018-PROVerは、加工範囲260×155×35 mm、主軸は小さなDCモーター(775モーター、最高10,000回転)で、269ドルでした(2026年10月11日は売り切れの表示)。SainSmart・3018-PROVer

木や樹脂、基板を削り始めるにはいい値段です。ただ、ここで紹介した機種とは、主軸の大きさ、囲い、ATC、冷却がまるで違います。金属を削るのが目的なら、選ぶ基準から別物だと考えたほうがよさそうです。

自分ならどれ:X1

自分はX1を、2026年10月15日にKickstarterで支援しました。いちばん作りたいのがチタンの小物で、そのための条件をいちばん具体的に出していたのがX1だったからです。9本のATCで、ボタンを押したら仕上げまで進む作り方にも期待しています。

ただ、二階に置くことと、引越しのたびに100 kgを運ぶことは、まだ不安です。4軸と5軸は、お金が足りなくて今回は付けられませんでした。選んだ構成と値段は、X1の記事に書きました。

チタンが目的でなければ、ED1やCarvera Airのほうが置きやすく、始めやすいと思います。

参考資料

更新履歴

  • 2026-10-17:X1をKickstarterで支援したので、「予約している」を「支援した」に直し、X1の価格をKickstarterの表示に、ED1の価格を予約価格の値上げ(2,399ドル→2,699ドル)に合わせて更新しました。5軸を試したい人向けの行に、X1の5軸付きセットの価格を入れました。 Carvera Airのセールが終わったので、価格を2,699ドル(4軸付き3,098ドル)に直しました。
  • 2026-10-11:初めて公開。