チタンのキーキャップを作りたい。工具交換も、できるだけ機械に任せたい。

そう思って卓上CNCを調べていて、いちばん欲しくなったのがNestWorks C500でした。工具を自動で替えるATC、自動の測定、囲い、潤滑。高専で旋盤やフライスを使っていたときに「ここ、楽にならないかなあ」と思っていたところに、欲しい機能が集まっているんですよね。1

自分と同じように、小さな金属部品を繰り返し作りたい人には、まず見てほしい機械です。ただ、比べるとToolDance X1もかなり気になる。今回はC500を中心に、X1、Carvera、Carvera Air、LUNYEE 3020 Novaを並べてみました。

紹介するCNCはどれも持っていません。数字はメーカーの公表値で、C500の仕様は2026年10月5日、価格は10月8日、ほかの機種の価格は2026年9月8日に確認しました。日本への送料や税は含みません。追記(2026年10月4日):この記事のあと、自分の本命はToolDance X1に変わりました。家で金属を削るための記事はまとめページに並べています。

ATCと囲いにお金を出したい理由

高専で使っていたとき、切りくずと切削油は結構嫌でした。危ないし、汚れるし、掃除も面倒。削って、測って、また削る。工具を替えたら、また合わせる。

削っているところや、最後の仕上げで表面がきれいになるところは好きなんです。でも、その前後の作業まで毎回ぜんぶ手でやりたいかというと、正直そうでもない。キーキャップを作るなら、1個で終わらせず1台分そろえたいので、工具を替えるたびに手を止めるのはなるべく減らしたいです。

この辺りを楽にできるなら、自分はお金を出したいです!

もちろん、ATCが付いていても、削っている間に放っておけるわけではありません。工具の交換と、長さの測定と、材料の位置合わせは、それぞれ別の仕事です。23

C500:欲しいものが、最初から全部入っている

惹かれたのは、主軸の出力より、欲しい機能が最初から1台にまとまっているところです。金属を削れる機械を買ってから、工具交換はどうしよう、囲いはどうしよう、潤滑はどうしよう、と一つずつ足していくのではなく、最初から全部そろっている。そこがいいんです。1

囲いを閉じたNestWorks C500と、前面の操作画面が写るメーカー公開写真
引用:NestWorks C500のメーカー写真。囲いと前面の操作画面が一体になっています。 掲載元/原画像(掲載元の販売ページは、2026年9月8日の確認時にパスワード画面でした)。

潤滑は、油を霧にして吹きつけるMQL。あとで出てくるX1は液体をかけて冷やす方式なので、同じ「クーラント付き」でも中身はけっこう違います。チタンについては「対応」の一言より、キーキャップくらいの物をどんな条件で削れて、どう仕上がるのかが知りたい。実機が手に入ったら、いちばんに確かめたいところです。

マニュアルを読むと、送りはC5級のボールねじ、ガイドはP級、モーターは閉ループと、何を使って動かしているかまで書いてあります。「高精度」の一言で済ませていないのはうれしいところです。ただ、ねじの等級がそのまま削った部品の精度になるわけではないので、そこは実際に削った結果で判断したいです。456

価格は、あとから申し込める枠で2,799ドルから

C500のKickstarterはもう終わっていて、3,541人が支援していました。公式ショップは閉じたままですが、Kickstarterでは、あとから申し込める価格(Late Pledge)が出ています。7

9月に見たVIP価格(2,599ドル)より少し上がっていますが、4軸付きでも3,199ドルから。本体だけなら、X1のVIP予約と同じ2,799ドルからです。ただ、届く見込みは「2026年4月」と表示されたままなので、今から申し込んだらいつ届くのかは、申し込む前にNestWorksに確かめたいところです。

キーキャップは作れても、キーボードは丸ごと作れない?

ここは見落としかけました。ATCを付けると、そのぶん加工範囲が狭くなります。しかも上の引用のとおり、その値が仕様表とFAQで食い違っていて、マニュアル(ATCありでX210×Y235×Z125 mm)ともまた違います。14

キーキャップのことばかり考えていたときは気になりませんでした。でも、その次に作りたいキーボードのプレートは、1枚がこの範囲に収まらないと1回では削れません。キーキャップが作れることと、キーボードを丸ごと作れることは別でした。

120 kgを、自分の部屋の机に置けるか

CNCを置くなら自分の部屋の机、と考えています。そこで引っかかるのが重さです。C500は今の公式ページで約120 kg。9月に見たときは210 lb(約95 kg)、マニュアルでは100 kgと、資料によってばらばらですが、どれにしても普通の机に気軽に載せる重さではありません。14

電源も、公式ページとFAQでは日本の100 Vが範囲に入る一方で、マニュアルは110〜220 Vと書いています。家のコンセントでそのまま使えるかは、届く仕様で確かめたいところです。A1 miniでも振動が気になることがあるので、音と振動も実機で見たいです。84

ToolDance X1:大きさと5軸まで考えると、こっちも欲しい!

C500を調べている途中で、X1がかなり気になってきました。

1,500 Wの主軸(日本の100 Vでは約900〜1,000 W、メーカーの回答)に、9本のATC、液体で冷やすフラッドクーラント。自動のプローブもあって、オプションで同時5軸まで広げられます。メーカーはチタンを含む材料への対応も書いています。91011

3軸の加工範囲は400×265×180 mm。さっきのキーボードのプレートも、C500より収めやすそうです。9

ToolDance X1の公表加工範囲を示すメーカー図
引用:ToolDance X1の加工範囲(メーカーの図)。キーボードのプレートが収まるかを見るために載せました。 出典・原図

9本もATCがあれば、ボタンを押したら仕上げまで終わった状態で出てきそう。5軸まで付けたら、もうボタンだけで完成させられそうで楽しみです。将来は時計の部品や小さな機構も作りたいので、あとから5軸に挑戦できる余地があるのはうれしいところ。

C500が欲しいのは変わらないけど、X1も普通に欲しいです!

早期価格しだいで、選び方が変わる

X1のKickstarterは、2026年10月15日に始まりました。本体だけのセットが2,999ドル(VIP予約をした人は200ドル戻って実質2,799ドル)、5軸を付けたセットは4,449ドルからです(10月16日確認)。出荷は2027年3月に始める目標です。くわしくはX1の記事にまとめました。

発売前だからといって候補から外すつもりはありません。早期価格や特典で必要な装備がそろうなら、先に支援する理由はあります! 必要な装備を付けた総額がC500に近いなら、かなり迷うと思います。ただ、5軸は別のオプションなので、本体の金額だけでは決められません。Kickstarterは普通の通販と違って、届く時期や中身が約束されているわけではないので、そのリスクも込みで考えました。712 結局、自分はX1を本体だけのセットで支援しています。

CarveraとAir:アルミや真鍮が中心なら、こっち

実は、最初に欲しかった卓上CNCはCarvera Airでした。材料を自動で測ってくれるプローブに惹かれていたんです(Carvera Airの記事)。

CarveraはATCが6本で、集じん機を内蔵。Carvera Airは手で素早く替えるクイック交換で、集じん機は別売りです。どちらも囲いと自動の測定が付いています。「交換が簡単」と「勝手に交換してくれる」は、使ってみるとかなり違いそうです。1314

ただ、メーカーは両機とも、鋼とチタンは「限定的な対応」で、長い時間削るのは勧めていません。チタンのキーキャップを繰り返し作りたい自分が、最初に選ぶ機械にはなりませんでした。1514

逆に、アルミや真鍮が中心なら話は変わります。メーカーが得意な材料として挙げていて、専用のCAMや教材もそろっています。加工範囲もCarveraが360×240×140 mm、Airが300×200×130 mmあるので、アルミのプレートならこの2機種も候補です。ATCまで欲しいならCarvera、手で替えるのでよくて価格を抑えたいならAir。自分ならそう分けます。151416

9月8日に見たGlobalストアの通常価格は、Carveraが5,799ドル、Airが2,699ドル(このときはそれぞれ5,499ドル、2,499ドルのセール中)。この差を払うかは、工具交換をどれくらい任せたいかしだいです。1514

Nova:安い。でも、囲いを後回しにはしたくない

主軸と加工テーブルの周囲が開いたLUNYEE 3020 Novaのメーカー製品画像
引用:LUNYEE 3020 Novaのメーカー画像。削るところのまわりに囲いがありません。 出典

LUNYEE 3020 Novaは、HG15系のリニアガイドと1204のボールねじを使っていて、本体は599ドル(米国向けの表示)。この値段でこの構成は、なかなか魅力です。17

ただ、ATCも囲いも付いていません。高専で切りくずの掃除をしていたことを思うと、安い本体を買って囲いはあとで考える、という選び方は自分はしたくないです。主軸の出力も製品ページは710 W、マニュアルは800 Wと違っていて、入力電圧も110 V/220 Vなので、日本向けに何が届くかは確認が要ります。1718

囲いも回収の設備も自分で用意できて、手での工具交換でいい人なら、Novaは十分に比べる価値がある機械です。

結論:自分はC500。ただ、作るもの次第で選び直す

今回の5機種なら、自分はこう選びます。発売前の機種は、公表された構成からの判断です。

作りたいもの・優先すること選び方
小さな金属部品。チタンも候補に残し、ATC・囲い・潤滑をまとめて用意したいC500を本命に比べる。自分の材種と部品での加工条件、日本向けの仕様を確かめる
大きめのプレートや、将来の同時5軸。出荷を待ってでも広げられる余地を取りたいToolDance X1を先に検討する。必要なオプション込みの価格と出荷の条件を見る
アルミや真鍮が中心で、ATCも欲しいCarvera。チタンの繰り返し加工とは分けて考える
アルミや真鍮が中心。工具交換は手でよく、囲いを自作したくないCarvera Air。外付けの集じん機の費用も含めて選ぶ
本体の価格を抑えたい。手での交換や、囲い・回収設備の用意も引き受けられるNova。日本向けの電源と出荷仕様を確かめる

自分は、まずチタンのキーキャップを作りたいです。形を調整して、気に入ったら1台分。そのために、工具交換や準備の手間を減らせるC500が欲しくなりました。

チタンを諦めて別の機械を買っても、結局またチタンを削りたくなると思うんですよね。なので、そこは外したくありません。

ただ、キーボードのプレートを1枚で作ることを最優先にするなら、加工範囲を見て選び直します。X1の必要な装備込みの総額が魅力的なら、そちらへ気持ちが動くかもしれません。

今の本命はC500。でも、X1の詳細がそろったら、もう一回ちゃんと比べたい!

追記(2026年10月4日):結局、X1をVIP予約しました。C500と比べ直した結果はToolDance X1でチタンの小物を作るならに書いています。

更新履歴

  • 2026-10-17:X1のKickstarterが始まったので、X1の価格と出荷の目標、自分がX1を支援したことを入れました。
  • 2026-10-08:X1の主軸が日本の100 Vでは約900〜1,000 Wになる、というメーカーの回答を書き足しました。
  • 2026-10-08:KickstarterでC500の価格(あとから申し込める枠で2,799ドルから)が分かったので、価格の章を追加しました。
  • 2026-10-05:C500の公式の仕様を「公式情報からの引用」の囲みにまとめ、文章を書き直しました。公式ページの変更に合わせて、重さ(約120 kg)、ATCありの加工範囲、電源、精度の値を更新。CarveraとCarvera Airのメーカー写真を外しました。
  • 2026-10-04:本命がX1に変わったことを追記。
  • 2026-09-08:初版。

出典

Footnotes

  1. NestWorks C500公式製品ページ — 主軸、ATC・測定、MQL、送り、精度、加工範囲、電源、重量、メーカーによる材料の紹介(2026年10月5日確認)。チタン加工の実測を筆者が行ったものではありません。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  2. Renishaw — Probing and tool measurement systems — ワーク測定と工具測定の役割。 ↩

  3. Haas — Operator’s Manual: Safety — 自動運転と加工工程の安全性は別に評価するという安全説明。 ↩

  4. NestWorks C500 Operation and Maintenance Manual, V1.0, 2026.03 — メーカー提出文書のミラー。印刷ページ5〜6:重量・移動量・電源、22:部品型式と等級。FCC提出文書の対応記録。現行出荷機との仕様一致や加工性能の第三者保証を意味しません。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  5. THK — ボールねじの精度 — ボールねじの精度等級。 ↩

  6. THK — 剛性の検討 — ねじ軸、ナット、支持軸受・取り付け部を含む剛性。 ↩

  7. NestWorks C500 Kickstarter — あとから申し込める価格(Late Pledge)、セットの中身、届く見込みの表示(2026年10月8日確認)。公式ショップ(shop.nestworks.ai)は同日もパスワード画面。日本への送料を含む総額は確認できていません。 ↩ ↩2

  8. NestWorks C500 Kickstarter FAQ — 電源100〜230Vの記載。過去の価格案内は現在の見積もりとして扱っていません。 ↩

  9. ToolDance — X1発表(メーカー発表文、PR Newswire掲載) — 1,500W主軸、9本ATC、鋳造アルミ合金フレーム、フラッドクーラント、オプションの同時5軸。 ↩ ↩2

  10. ToolDance X1公式ページ — 3軸加工範囲、測定・加工機能とオプション。 ↩

  11. IFA — ToolDance出展者情報 — メーカーによる材料対応、Kickstarterを2026年10月に開始予定との案内。 ↩

  12. Kickstarter — What is a creator obligated to do once their project is funded? — 通常の通販との違い、未達・返金等の基本的な考え方。 ↩

  13. Makera — Carvera / Carvera Air比較 — 工具交換、200W主軸、囲い、測定、集じん構成。 ↩

  14. Makera Global — Carvera Air — 価格、手動クイック交換、材料対応、集じん機本体が含まれないこと。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  15. Makera Global — Carvera — 価格、ATC、材料対応など。鋼・チタンは限定対応で、長時間加工非推奨。 ↩ ↩2 ↩3

  16. Makera — Support Content — 公式マニュアル、例題、操作・保守資料への案内。 ↩

  17. LUNYEE — 3020 Nova — 本体価格表示、HG15系ガイド、1204ねじ、710W主軸、製品構成。表示時の配送先選択はUSA。 ↩ ↩2

  18. LUNYEE — 3020 Nova Instruction Manual — 印刷ページ1:入力電圧、3:800W主軸等。現行製品ページとの表記差に注意。 ↩